マンドリン&ヴァイオリン
 
 私がヴァイオリンを始めたきっかけの数ある中の一つに、これは、マンドリンを弾いていただけでは、とても理解が出来ないだろうと思った事がある。 
 それは、10年位前にさかのぼる。ドイツから越智先生が四国に帰ってこられて、高知でも演奏会を開いてくれた時だ。ソロ曲の合同練習をしている時私は、あることに気がついた。それは、写真で示す部分(1弦から4弦まで)に弦を巻くようにガムテープが貼られているのだ。
 私は不思議に思い、奥様のシルビアさんに尋ねてみた。すると、その部分から出る倍音が気になるから、倍音が出ないように貼っていると言う事だった。
 私は、愕然となった。そんな事考えた事なかった。そう言われれば、理屈では理解できる。上駒から下駒までの長さと、下駒から止め金までの長さの比が、整数比でなければ、(例えば、5:1)開放弦を鳴らした時でさえも不協和音になってしまうのだ。
 それを、シルビアさんはマンドリンを弾いていて、その倍音との不協和音が気になり、ガムテープを貼っていると言う。その、耳の良さに、驚愕し、ほとほと感心させられた。私はこの時、この事を実感できる耳を作るにはマンドリンだけを弾いているだけでは、絶対にむりだと直感的に思った。
ここで、上の写真を比べてみよう。下駒から、弦を止める所までが、ヴァイオリンは短く、マンドリンは長い。ヴァイオリンは、テールピースと呼ばれる板で下駒からの弦の響きを抑えるような構造になっている。この、テールピースが上に書いた倍音を抑える為にあるのだとしたら、すごいことだと思う。ヴァイオリンを弾く人はどんな耳をしているのだろう・・・・・・。
今、わたしは二つの楽器を弾いている。しかし、残念ながらマンドリンを弾いても、倍音は気にならない。何年か先にはこの事が実感できたらと思っている。死ぬまでだめかも知れない。しかし、この様な楽しみ、課題のある自分は幸せ者だと思う。まあ焦らず、ゆっくり歩こう。音楽は、一生をかけて学ぶものだから。

終わり